世界で一番


「遅い!」


 前を行く男の子が振り向きざまに荒々しい口調で怒鳴るように言葉を紡ぐ。……遅いって。思わず表情をしかめてしまうものの、それをかんどられたら更に彼の機嫌が悪くなることはわかっていたので、なんとかしてにこやかな笑みを浮かべる。
 それも気に食わなかったのだろうか。が男の子に追いついた瞬間、彼はの胸の真ん中あたりを指先で突付きながら、一言一句しっかりと言葉を発した。


「今日、何の日か分かっているわけ」
「……ええと、お出かけの日、かな」


 無難な答えを口にすると、わかっているんじゃん、と言う満足がいったような表情を浮かべ、男の子──鏡音レンは、指先をから離した。いつものセーラーとは違う、何処で買ってきたのか、シンプルな服に身を包んだ彼は、嬉しそうに笑みを浮かべる。


「わかっているなら、早く行こうよ。せっかく、おれとマスターが一緒に、二人で、出かけることの出来る日なんだから」


 二人で、と言う部分が強調されるように一言一言区切られて口にされた。彼は口唇の端に笑みを乗せると、靴を鳴らした。こつこつと、地面を鳴らす音が響く。


「デート、だよ。言っておくけれど」


 レンは少しの間を置いて、意地の悪い笑みを浮かべると、そう続ける。デート。思わず苦笑いに近い笑みを浮かべてしまうのはしょうがないだろう。デート、と語尾を上げ調子に問い掛けると、目の前の金髪が縦に揺れる。彼は青緑の瞳でをじっと見つめると、何かを言ってもらいたげに忙しない様子を見せた。
 デート。心の中で言葉を反芻する。……デートというよりは、買い物に近い気がするのだけれど……ん? それがデートなのか。よくわからない。
 そもそも、こんな風にレンと一緒に出かけることになったのは、の一言による。丁度、近くに面白そうな雑貨店が出来て、一度行って見たい、そう思っていたのだ。それをこの前チラシを見ながらぽつりと口にした。とたん、近くに座っていたレンが「なら、おれと一緒に行こうよ。マスター、一緒に行ってあげるよ」と言う言葉を発したのだ。それは助かるし嬉しい。は直ぐに了承の意を示し、遊びに行く日付を決めた。それが今日。

 レンは朝から洗面所を独占し、その上、何処で調達してきたのか、いつもの服とは違うものを着込み、待ちきれないと言った様子で直ぐに外へ出て行ってしまった。それを見て焦ったのは言うまでもない。即行で身支度をして、彼の後を追いかけた。そうして、まあ、「遅い!」と言われたのだけれど。

 ふと、思考を飛ばしていたら、険を含んだ声が響いてきた。をマスターと呼ぶ声。意識をレンへと向かわせる。彼は眉を盛大にひそめ、口を開いた。


「ねえ、おれの話、ちゃんと聞いているの?」
「え、あ、うん」
「じゃあ今さっきおれが言った言葉を言ってよ。今すぐ」


 困る。焦りながらも彼の言ったであろう言葉を記憶の底から探り出そうとする。けれど、見つからない。目の前のレンの機嫌は悪くなっていく一方だ。ちょっと、あの、え? 焦りで思考がおぼつかない。は小さく息を吐くと、場をにごます笑みを浮かべた。
 レンは一瞬、拗ねた表情を浮かべ、の額へとでこぴんを食らわせてきた。痛い。涙目になってしまう。額を抑えて、何をするの、と言葉を口にする。レンは盛大に肩をすくめ、一言、


「聞いていないほうが悪い」


 切って捨てた。……いや、聞いていないも悪かったけれどさ。思わずレンにでこぴんをし返してやろうかと思うものの、直ぐに考えを打ち消す。悪いのは全面的になのだから、でこぴんくらい甘んじて受けるべきなのだろう。……痛かったけれど。
 ごめんね、と苦笑交じりに言葉を紡ぐと、レンはん、と小さな声を出し、次いで右手を顔の横でぶらぶらと振った。
 ……何? 右手がどうかしたのだろうか。
 思わずまじまじと見つめてしまう。レンはひとしきり右手を振った後、小さく溜息をついて手を下ろした。……何がしたかったのだろう。首を捻ると同時に、又も地面を鳴らす靴の音が聞こえた。こつこつと、アスファルトの地面をリズム良く叩く音。……何? 心の中に疑問を浮かべるものの、言葉に出すことはせずにレンを見つめる。レンはやはり小さな溜息を落とすと、を鋭く睨みつけた。いらだたしげに唇が開かれる。


「マスター、全然わかっていない」
「……へ?」


 唐突な言葉に思わず変な声を出してしまう。レンは不機嫌で表情を染め、もう一度、はっきりと、わかっていない、と叫ぶように言った。ちょちょちょ、叫ばないで下さいレンさん! 他人の目が気になります!
 彼の靴の爪先がとんとん、とリズムを刻む。何かをして欲しいのだろうか。何となくそう感じるものの、何かをして欲しいという、その何かが良くわからない。どうしようもないので笑みを浮かべて見せると、苛立ちまじりの声が飛んできた。


「ホント、全然わかってない! 洞察力も、観察力も無い! マスター無い無い尽くしじゃん!」
「ちょ、あの、意味が……」


 焦りが増す。本気で彼が何を望んでいるのかがわからない。言葉を紡げずに居ると、レンの鋭い眼光がをさしてきた。彼は小さく吐息を肩へ落とすと、踵を返した。足早に歩いていき、途中で振り返る。が動けずに居るのを見て、マスター、と起こったように叫んだ。ついてこいということなのだろう。
 は何故か込みあがってくる溜息を押し殺しつつ、レンへと歩を進めた。

 彼はが隣にやってくると、再度歩き出す。よりも若干早い歩調は、着いていくのがやっとだ。会話が無くなってしまう。レンが時折、何かを言いたげにへと視線を向けるものの、その意味は推量することが出来ない。茶をにごすように笑みを浮かべると、直ぐに視線を逸らされるし。……何をして欲しいのだろう。
 ──歩いていくと、信号機に捕まった。レンがぴたりと歩を止めるので、も止める。目の前の信号は青が点滅していた。渡ろうと思えば渡れるのだけれど、レンが動き出そうとしないので、も動き出すことが出来ない。青が次第に赤へと変わる。目の前の車道を車が凄いスピードで走り去っていく。その様子をぼんやりと見つめていると、横から声が飛んできた。


「何を、買うの?」
「それは雑貨店で?」
「そう」


 簡潔に紡がれる返事。それに苦笑を漏らしつつ、は言葉を返した。


「んー、まちまち。色んなものを見て、欲しいものがあったら、買うかな」


 言葉を返すと同時に、信号が赤から青に変わった。レンが足早に歩を進める。も歩き出した。彼の隣をついていくように進む。彼の表情は依然として不機嫌そうな雰囲気をかもし出していて、なんとなく、気おされる。
 雑貨店についたのはその後直ぐだった。店の中へと入り、いろいろと見て回る。ヘアゴムも売っていたので、レンと共に色々なものを見た。彼は余りヘアゴムを持っていなかったし、こういうの、きっと喜んでくれると思ったのだ。
 でも、違った。彼はが薦めたヘアゴムを見るなり、不機嫌を一層表情へ浮かべ、小さな声で呟いた。


「……わかっているの?」
「何を?」


 問いかけに問いかけで返したからか、レンは眉をひそめ、かすかに鼻を鳴らした。それから逡巡するように視線をとヘアゴムへ交互に向け、小さくぶっきらぼうに呟いた。


「いらない」


 多少ながらも驚いた。というよりは傷ついた、といえば良いのかも知れない。ただ、それをおくびに出すこともせず、はそっか、と言葉を零してヘアゴムを元あった場所に戻した。まあ、彼が気に入らなかったのならしょうがない。買ってもつけてくれなかったら意味が無いのだし、あんなふうにはっきりと断ってくれたのは良かったのかもしれない。
 じゃあ違うの見るー? と問い掛ける。するとレンは一瞬だけ瞳の色を揺らし、の服の裾をそっと掴んだ。唇が弱弱しい言葉を紡ぐ。


「怒っても、良いんだよ」
「何で? じゃあ、他のを見ようか。リンにもお土産を買わなくちゃだしね!」
「……」


 一瞬だけ、彼が寂しそうな表情を浮かべた。何故かはわからなかったけれど。

 それからリンへのヘアピンを買い、二人で喫茶店へと向かった。二人がけの席に向かい合わせに座る。レンがウェイトレスさんから手渡されたメニューを見て、何を頼んでも良い、と控えめに言葉を紡いだ。どうぞ。首を縦に振って了承の意を示すと、彼は一気に嬉しそうな表情を浮かべ、ケーキのページを開いた。次いで言葉を紡ぐ。


「じゃあ、おれ、バナナケーキ!」


 レンはどうしてか、バナナと名がつくものが好きらしい。それに甘いものも。頼んだものが何だか微笑ましくて笑ってしまう。すると、彼は一瞬拗ねたような表情を浮かべた。バナナケーキという文字を差していた指先がつつつと動き、横の飲み物のページへとうつる。彼はそこでコーヒーの部分へ指先を移動させると、不機嫌な声音で言葉を紡いだ。


「……じゃなくて、コーヒーが良い。無糖で」
「え……」


 コーヒーなんて飲んだこと、無いだろうに。思わず唖然とした表情、それに声を出してしまうと、レンの表情が何か文句でも、と言うように歪んだ。コーヒー、と問い掛けるように言葉を紡ぐと、彼はしっかりと頷く。
 ……本気、ですか……。

 何で急にコーヒーなんて頼んだのかはわからないものの。はウエイトレスさんを呼び、注文をした。コーヒーとバナナケーキを一つずつ。バナナケーキを頼んだとき、レンの顔が瞬時にして歪んだ。ウエイトレスさんが去った後、彼は苛立ちを混ぜた声音で内緒話をするかのように小さく言葉を零す。


「……どうしてバナナケーキなんて」
が食べたいからね。レンも食べたかったら言ってよ」
「言わない。おれ、コーヒーで充分だもん」


 そっか、と吐息混じりに零すと、彼は一瞬だけ唇を尖らせた。拗ねたような表情。ただ、浮かんだのは一瞬だけだった。次の瞬間にはいつもの、真面目な表情へと戻り、彼はテーブルの上で腕を組んだ。それに乗せるように頭を置く。視線がテーブルを這うように動き、最後にの瞳へと移った。
 ん、と首を傾げて見せる。レンはふいと視線を逸らすと、突き出た唇を器用に動かし、別に、と言葉を紡ぐ。そう、と呟いては視線をテーブルへと向けた。話題が、あまり思い浮かんでこない。なんとなく気まずくなる。は小さく吐息を肩へと落とすと、テーブルに片肘をつく。
 ──それから視線を周りへと飛ばした。ぽつぽつとテーブルが埋まっている所を見ると、この喫茶店はまずまず繁盛をしているのだとわかった。カップル、それか親子、一人で来ている人。そんな人々の姿が目に入ってくる。表情に仕草。別段人をじろじろと見る趣味はないものの、何もすることがないので視線をうろうろとさまよわせる。

 少しして、レンがあのさあ、とかすれたような声を出した。耳朶を軽やかにつくそれ。彼へと視線を戻す。
 レンは組んだ腕をテーブルに乗せたまま、ふてくされたような表情を浮かべていた。の視線に気づき、青緑が揺れる。


「……子供っぽく、無いだろ」
「何が?」


 胸に浮かぶ疑問をそのまま口にすると、彼は顔を伏せた。ゆるゆると髪の毛が左右に揺れ、くぐもった声が響いてくる。


「……別に、何でも」
「そうなの? なら、良いけれど……」


 追及を拒絶するような響きがあったので、それ以上詮索をせず、話を打ち切る。無言があたりを──というよりは、とレンを──包んだ。やはり話題が見つからないので、は言葉を紡がずに視線を再度、周りへと向かわせた。
 ……子供っぽくない、ねえ。どういう意味なのだろう。そのままの意味、なのだろうか。……だとしても、意味がわからない。あれか。バナナケーキが子供っぽいって、そういう意味なの、かな。──よく、わからない。
 どれだけ考えても、それは推量に過ぎないので考えを打ちとめる。ちょうど、ウェイトレスさんが注文した品物を運んできた。レンの前にコーヒー、の前にバナナケーキが置かれる。ウェイトレスさんは小さく会釈をすると、ごゆっくり、という言葉を呟きその場から去っていく。
 は目の前に置かれたケーキへと早速フォークを差し込み、切り分ける。パウンドケーキで、口に含むとバナナの甘い味が広がった。美味しい。
 んー、と思わず声を漏らすと同時に、レンが軽くせき込む声が聞こえた。

 ケーキへ向けていた視線をレンへと向ける。彼は片手にコーヒーの入ったカップを持ち、顔を斜め後ろ方向へと向けて、軽く咳をしていた。少しして、それは収まったものの、レンはカップを机の上に置くと、親の敵でも見るような目でそれを見ていた。の視線に気づくと、恥ずかしそうに頬を染めて、もう一度コーヒーを口に含んだ。唇を離し、口をもにょもにょと動かす。彼は言葉を耐えきれず溢れだした水のように紡ぐ。


「……に、が……」


 そりゃあ無糖だし。こっくりと頷くと、彼のすがるような視線がへと向かってきた。苦笑いを返し、コーヒーの入ったカップを手に取る。口に含んだ。苦味が口腔に広がる。
 カップから唇を離し、はレンへ笑みを浮かべた。


「苦いねー」


 レンの瞳が逡巡するようにめぐり、やがて彼は小さく頷いた。は彼へとケーキの乗った皿を渡すと、「でも」と続ける。


「コーヒー、飲みたいと思っていたところだったから。交換しようか」
「……ま、マスターが言うなら、しょうがないなあ」
「うん。ありがとう」


 笑って感謝を述べると、彼はなぜか気まり悪げに視線を逸らした。眉をひそめて、なんだか微妙に泣きそうな表情を浮かべる。
 としてもブラックは飲めると言えば飲める、その程度のものなので備え付けられた砂糖とミルクを取りに行き、適量を入れてコーヒーをのみ下した。

 それから、代金を払い、店を出る。
 少し歩いてから、レンがへと顔を向け、首をかしげる。どこへ行く、そう瞳が問いかけてきた。
 そうだなあ、次にどこ行こうかな。考えを巡らして、そういえばリンがプリンを食べたいと言っていたのを思い出した。そのまま言葉を口にする。


「リンがプリンを食べたいって言っていたから、プリン、買いに行こうか」
「……あのさあ」


 不機嫌な様子がありありと見て取れる声音と表情を浮かべ、彼は肩をすくめて見せた。へ指先をつきつけ、荒々しく言葉を紡ぐ。


「今、何をしているか、わかっているのかよ」
「買い物」


 間髪入れずに返すと、彼の表情が歪んだ。苛立たしそうに靴のつま先で地面を軽く叩く。


「デート、って言ってるだろ!」
「ええと、そうだった、ね。ごめん」
「それなのにおれ以外の話題を出すとか──」


 レンは顔を盛大にしかめると、踵を返し、そのまま歩きだしてしまった。あれ、怒らせて、しまった? しかも盛大に。
 思わず焦ってしまう。レンの歩く速度は先ほどよりも格段に素早くなっていて、追いつくのも難しいほどだ。その上、今日に限って道が混雑していて、あやうく彼を見逃してしまいそうになる。彼の名前を口にする。彼はを一瞥もせず、そのまま速度を上げて行く。
 ちょちょちょ。本気で焦る。もう一度名前を呼ぶ。苛立ちが混じっていたのかもしれない。レンは一度肩をびくりと震わせると、そのまま走り出してしまった。ちょ! 見失う──!

 も走り出す。レンは更に速度を上げていく。道を行く人々が何事か、とでも言うように視線を向けてくるのがわかる。なんとなく羞恥がっていうか……は、恥ずかしい……。ただ、すぐに視線が外されるからよかった。本当に。
 目の前を行くレンを見る。彼が突っ走る先に、青が明滅しているのが見えた。え、ちょ、レン、そのままじゃ。彼は気付いていないのだろうか。気付いていたら、止まるはずだ。けれど──。


「レン!」


 叫ぶ。彼が一瞬だけ歩を止めた。走って近寄り、逃げられないように後ろから抱き締める。一瞬の後、目の前を車が横切り始めた。


「轢かれる、危ないでしょ!」


 抱きしめたレンの体が震える。……怖がらせたのだろうか、彼は小さく掠れた声でマスター、とを呼んだ。いつまでも抱きしめているわけにもいかないので、はすぐに体を離すと、レンの手を取った。引っ張り、道の端へと移動する。それから、彼の体をに向け、視線を合わせた。


「危ないから、もう急に走りだしちゃ駄目だよ」
「……だって……」


 レンの瞳の色が薄く滲む。彼は顔を俯かせると、もう一度、だって、と呟いた。さらりと絹糸のような髪の毛が挙動にそって揺れ、ひまわり色が太陽を反射して輝く。彼は言葉を何度か呟いたあと、視線を鋭くしてを見つめ、はっきりとした言葉で紡いだ。


「……わかってるよ、そんなの! それより……っ、なんで、抱きしめて……」
「だって、ああしないとレン、また走りそうだったから」
「……それだけ?」


 レンの瞳が期待に濡れる。……それだけ、って、それだけなんだけれど。ただ、なんとなくここで頷くと、彼の機嫌を損ねる気がした。ので、言葉を返さずにレンとつないだ手を一層強く握り、そのまま歩きだした。レンが慌てたような声を出し、の横へと並ぶ。横断歩道を渡りながら、彼は自由な片方の手で、の服をくいくいと引っ張る。


「そ、それだけ、って訊いているのに! 答えてよ」
「……どうだろうねー。レンの機嫌が直ったら教えてあげるよ」
「お、おれ、機嫌、良いよ? だから、ねえ、教えてよ! 教えて、って──もう、マスター!」


 レンの声に怒気が混じるものの、本当に怒っていないことは言葉が弾んでいることから、安易に想像できる。
 レンは再度、強くの服を引っ張ると、強い語調で言葉を発した。


「おれのこと、誰だと思っているの! 教えてくれよ!」
「鏡音レン様ー?」


 ふざけて言うと、レンは顔をしかめ、頬を膨らませた。それからしばらくして、小さく「……ばか」と呟いて、表情を柔らかい色に染めた。へと体をくっつけてくる。暖かい体温が、布地越しに伝わってきた。
 レンは繋いだ手とは違う方の手で、の腕を軽く掴むと、嬉しそうにほほ笑む。


「……そうだよ、鏡音レン様だよ。だから、教えてよ、ね。おれだけに」
「拒否します」
「拒否は無し! おれのお願いなんだから、叶えて当然だろ?」
「……リンへのプリンを買ってからね」


 観念したように呟くと、レンは一層、喜色を表情へと浮かばせると、弾んだ調子で言葉を紡いだ。


「……わがままなんて、言ってない、からな!」


 凄いわがままを言っていると思います。……心の中でそう呟きながらも、彼の笑みを見ているとなんだかどうでもよくなってくる。頷いてそうだね、と返す。呼応するように、レンの手が、のそれを強く握った。


(終わり)

【ニコニコ動画】初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「ワールドイズマイン」様が好きです。大好きです。愛しています。
ミクの曲なのに……レンで書いてすみません……。いつかミクも書いてみたい。是非是非。
2008/06/25

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