あなたへ歌う 09
 (おねだりする子供)

 家へ帰ってきたとレンを迎えたのは、やっぱりというかなんというか、リンの悲鳴だった。


「マスター! それに、レン! もう、何処に行ったのかと思ったじゃない!」


 とんとんと、あるいは猛然として、彼女は玄関口までやってくると、怒ったように腰に手を当てた。格好だけ見れば、怒っている、そう思うかもしれない。でも彼女の表情──顔は、心配そうな色に染まっていた。
 眉を八の字に下げ、瞳をわずかに揺らし、リンはレンを指差す。


「次に何処かへ行くときは、少しぐらい言いなさいよね!」
「……」


 レンが首をかしげる。なんで、と言いたそうな表情だ。リンはそれを感じ取ったのか、居心地悪そうに俯き、手を胸の前で組んだり組まなかったりしつつ、もごもごとした声を発した。


「驚くし……それに、わたしだって、着いていきたかったもん。マスターを迎えに行くのなら一言くらい……」


 リンが俯かせていた顔を上げ、言葉を続けた。「とにかく」


「教えてよね! 次からは、ちゃ、ん、と!」
「──」


 リンの指がレンの胸辺りまで下がる。彼女は不服そうな表情を浮かべて、レンの胸を指先で三度突付いた。その後、ほんの少し近づけていた体を離し、を見て嬉しそうに笑みを浮かべる。


「マスター、お帰りなさい! 雨、大丈夫でしたか?」
「ああ、うん。レンが傘を持ってきてくれたからね、大丈夫だったよ」
「……うう、わたしも一緒に行きたかった」


 いじけるリン。そんな姿を見て多少笑みを零しつつ、「またいつかね」と軽く頭を撫でた。すると、彼女は頬を増して紅潮させ、「マスター」と嬉しそうに身をよじらせる。
 ……かわいいなあ、写真に撮って収めたいくらいだ。盛大に頬を緩ませる。妹のような存在、ってこんな感じか。にやにやしてしまう。

 リンは正直、可愛い。本気で。
 太陽を思わせる黄金色の髪の毛は美しいし、手触りが良い。その上に乗っかるようにある白いリボンも、彼女の髪の毛と対比されるように映えていて、とても似合っている。彼女が激しく身を動かすたびに、髪の隙間から白いインカムがひらりひらりと見せつけるように存在を主張する。突き出た唇はほのかな桜色で可愛らしいし──、って、なんだかこんなに描写ばっかりしていたら、なんだかイケナイ変態さんになったみたいだ。
 まあ、とにかく可愛い。百人に聞いたら百人が可愛いというような、そんな少女独特の可愛らしさを持っている。

 リンから視線を逸らし、レンへとやる。レンはの視線に気付いたのか僅かに目線を上げ、微々たるものだが首を傾げた。
 レンは──可愛い、って言ったら失礼か。カッコイイ。あまり喋らないからか、十四歳に見えない。まあ、描写は省いておこう。レンまで色々と観察したら、流石に本当の変態さんになってしまう。

 靴を脱ぎ、一歩を踏み出す。レンもに続くように靴を脱ぎ、一歩踏み出した。途端、水に濡れた形容しがたい音が響く。ぺたぺた、というかべちゃべちゃ、というか。
 リビングへと向かわせていた足を止める。途端、音も鳴り止んだ。レンの方を見る。彼は、わずかに変な表情を浮かべ、足元を見ていた。


「レン……お風呂、入ってきて」
「……お風呂、ですか」


 音の発生源は間違いなくレンの足だろう。雨の中、走ってきた彼の靴は、泥と雨とでぐしょぐしょになっていた。これは洗って乾かせば済むとして、問題はレン自身だ。
 彼は走ってくる最中、横殴りの雨にでも出会ったのだろう、濡れていた。髪はしとしとに塗れ、肩の辺りに水滴を落としている。頬も、やはり濡れている。ハンカチで拭いたから、いくらかはマシだけれど。
 最近の雨はレモン果汁に近い酸性を持っているらしい。正直、非常に髪に悪い。たしか、像を溶かす程度の酸性なのだから、その、レンの皮膚が何で出来ているかはわからないけれど、と、溶け……。……想像するのは止めておく。
 とにかく、雨は流い洗すべきだろう。ちょうど、べとべとに濡れてしまっているようだし。

 レンは視線を下げ、手を見たり、腰を捻って足を見たりしていたけれど、すぐにと視線を合わせた。表情には怪訝なものが浮かんでいる。


「ですが、おれには風呂なんて必要ありません」
「いやいやいや。風呂は必要だから。絶対に。今のレンにとっては」
「……? 濡れているのなら、いつかは乾きます」
「いや、そりゃそうだけれど!」


 なんていうか、ベトベトするじゃん! そのままだったら!
 そう続けても、彼は瞬きを繰り返すばかりで、何もわかった様子を見せない。


「レン、あのさ、うん、風呂に入ろう」
「……マスターが言うなら」
「マスター、マスター!」


 お願いです、頼むから、なんて言外に潜ませて言葉を発すると、彼は素直に頷いた。良かった。本気で。
 ふう、と息をつくと同時に背中に何か重いものがのしかかってきた。続いて、「マスター」と弾んだ声が耳に届く。


「わたしもお風呂、入りたいなー」
「リンも? 良いけど……それだったら、お風呂、どうやってわけよっか」


 というか分けるという前に、リンやレンはお風呂について──まあ、例えばシャンプーやリンスとか、そういうものの使い方とかを知っているのだろうか。
 その問いをそのまま口にする。するとリンは僅かに閉口してから、「えへ。ダイジョーブです! そういう生活豆知識は全部、わたし達の中に入ってますんで!」と続けた。
 せ、生活豆知識……。何だか色々とツッコミたい。お風呂の入り方が生活豆知識て。そ、そっか、と息を漏らすように言葉を発すると、彼女はもう一度笑い、「だから」と続けた。背中にあった体重が何処かへと消える。
 リンはレンの前に立つと、


「わたしとマスターは女の子だけど、レンは違うもん! だから、レンは一人で入ってね。出来るでしょ?」
「……」


 レンが瞳を動かして、を見る。小さく開かれた口は、何かを象ろうと動かされたけれど、直ぐに閉じられた。頷く。
 それを見て、リンが満足気に頷く。


「うん! じゃあ、レン、先に入りなよ! わたしとマスターは、後!」
「わかった」


 何かを言いたかったのだろうか。レンに向かってそれを問おうとする。けれど、彼はわずかにと視線を合わせたきり、顔を俯かせてしまった。
 彼はすっとの横を横切り、風呂へと向かう。彼が脱衣所に入ってから、シャワーの音が聞こえてくるのは、早かった。

 レンが風呂に入っている間、はリンと一緒にテレビを見ていた。画面には、何やらデートスポットやらショッピングモールやらの紹介が映っていた。
 リンはにこにこと、笑みを浮かべながらそれを本当に嬉しそうに見て、面白そうなところがあると興味が惹かれたように体を乗り出す。なんだか行動全てが愛らしく思えてくるのは、こう、親ばかみたいなものなのかもしれない。

 紹介が終わり、コマーシャルが入って、次の番組のドラマ──どうやら恋愛物らしい──に差しかかった途端、だろうか。脱衣所の扉が開く音、それと同時にひたひたと誰かが歩いてくる音が聞こえた。誰かなんて決まっている。レンだ。
 視線を向ける。レンはいつもの髪型──ではなく、リンと同じくらいの長さの髪をまとめずに下ろしていた。白いインカムを手に持っている。の隣まで来ると腰を下ろし、テレビ画面に視線を向けた。

 正直、髪を下ろしているレンを見るのは初めてだ。公式で鏡に映った異性の姿、と言われているだけあってか、リンに良く似ている。違うところは、僅かに眉が太いところ、それとやっぱり、ほんの少しつり目な所、だろうか。瞳の色も、よく見ればかすかに違う……気が……。
 眉をひそめて見つめるが気に掛かるのか、それとも何か思う事があったのか。レンはテレビに向けていた視線をに向け、「マスター」と語尾を上げた。


「どうかしましたか」
「え? あ、やー……、ちょっとね」
「そうですか」


 首を傾げると、満月のような色の髪の毛がさらりと彼の頬を流れた。……髪。


「あ、のさ、レン。髪は? くくらないの?」


 頭を指さしてそう言うと、彼は「ああいうのは、全部、リンがやってくれるんです」と言葉を発した。そうなのか。リンが。それにしても、綺麗な色の髪の毛だ。
 ……こう、いじりたいという衝動が沸き起こってくるのは、しょうがないと思う。


「ね、やってみたいな」
「マスターが……、ですか」
「そうそう。だめ? だめなら良いけれど」


 唐突に発した言葉に、レンは驚いたのか、僅かに目をぱちくりさせ、その後、頷いた。おお、ということは良いのか。髪いじり、しかも、こんな綺麗な髪の毛で出来るとは。夢にも思っていなかった。
 やった、と言葉には出さず心の中で叫ぶ。ちょうど、その時、ドラマにコマーシャルが入った。
リンがの手を取って立ち上がる。
 

「じゃあ、お風呂入りましょう、マスター」 
「そうだね。じゃあ、レン。髪いじりはお風呂入ってきてからで良いかな」
「はい」


 立ち上がる。投げかけた問いにレンは頭を頷かせ、小さく返事をした。
 ──たぶん、きっと、聞き間違いだろうけれど、彼はその後、「待ってますね」と小さく、呟いた……ように、聞こえた。

 脱衣所でリンには大きめのバスタオルを渡した。体に巻いてもらうためだ。彼女は服を脱いだ後、の言ったとおりにそれを巻き、お風呂へと突入した。遅れてが入る。かけ湯をして、体を洗い、リンがやると言ってくれたので頭を洗って貰った。
 そういえば、リンは入る前、に何かを貼って貰うよう、頼んできた。半透明のテープ上のもの。ふくらみがある場所に貼ってください、と言われ為すがままにしたけれど、あれは一体何だったのだろう。もしかして、ふくらみの部分は防水加工がしてなくて、それを為すためのものだったのだろうか。……まあ、想像しても答えはわからないけれど。訊く気もあんまり起きない。

 湯船に体を静めつつ、小さく息を吐く。リンが「マスター」とを呼んだ。


「なーに」
「マスター、今日は楽しかったですか? というか、なにをしてたんですかー? わたしに教えて下さいよう」


 きらきらと瞳を輝かせるリンは、まるで子供のようだ。
 ……というか、子供なのだろうけれど。それにしても、今日。楽しかったか楽しくなかったかと言えば、楽しかった。友達とお喋りしたのだから。
 うん、と頷いて、言葉を続けた。


「友達とね、喋ってたんだよ、色々」
「そうなんですか、へえー……友達」


 たどたどしい声で、リンは「と、も、だ、ち」と繰り返す。そうして、嬉しそうに破顔したかと思うと、「マスターの友達!」と湯船の中で手を揺らす。衝撃か何かで水面に波が立った。


「楽しかったんですよね! 良いなあ」


 なんだか、羨望のようなものが混じった声、だったと思う。よくはわからないけれど。リンは優しげな笑みを浮かべると、言葉を続けた。


「マスター、わたし、マスターと又何処かへ遊びに行きたいなあ」
「遊びに?」
「うん。それでね、いっぱい……めいっぱい、楽しむんです」


 何処かから情報を集めてきたのだろう。リンは饒舌に言葉を紡いでいく。


「前に行った公園でも良いです。他の──どんな所でも良いです。マスターと一緒に、どこかへ行きたいです。しょうがないから、レンも一緒に。遊んで、沢山遊んで、わたし、思い出を記憶したいです」


 揺るがせていた手を止め、彼女はそっと自身の胸に当てた。半月のように瞳を模り、嬉しそうに声を弾ませて。


「ずっとずっと、忘れないように!」


 そう言って、リンは湯船から体を出し、風呂をあがってしまった。一瞬、唖然としつつもも遅れてあがる。
 脱衣所で寝巻きに着替える。リビングへ向かうと、どうやらドラマはもう終わってしまったようで、エンディング曲が流れていた。レンは変わらず、座っている。


「あ、ねえ、リン」
「はい、なんですか、マスター」
「今日は、やりたいな。レンの髪の毛結ぶの。やってもいい?」
「髪の毛、ですか。良いですよ」


 元はリンがすべきことなので、承諾をしてもらうよう頼む。彼女は一つ笑いを零すと、快く承知してくれた後、リンは何かを含んだような笑いを浮かべ「ただし」と言葉を続けた。


「わたしの髪の毛も、梳いてくれるなら」
「うん、良いよ」


 間髪入れずに返事をする。すると、リンは一瞬、呆気に取られたような表情を浮かべていたが、直ぐに嬉しそうに頬に手を当て、「ほ、本当ですか? わたし、嬉しいです!」と笑みを浮かべた。
 彼女は笑い声を零し、嬉しそうに自分の髪の毛を撫でつける。リボンとインカムが無いからか、なんだかふとした仕草でも新鮮に感じてしまう。

 レンの後ろに座り、髪を撫でつける。レンはテレビに向けていた視線をに向け、小さく唇を動かした。


「マスター」
「あがったからさ。やっても良いー?」
「……はい」


 レンは用意していたのか、わたしに一つの髪留めを手渡す。これで髪を結べと言うことなのだろう。受取る。くしを取ってきて、髪の毛をさらさらと梳かしていく。あー、良いなあ。さらさらだ。いつもどんなことに気をつけていたら、こんな風になるんですか、と訊きたい。
 リンがの横に座り、の指先をじっと見つめる。うわ、なんていうか緊張してきた。


「……も、もし、変なことになったら、リン、助けてね」
「変なこと、ですか? はい、もちろん!」


 変なこと、と言う言葉にリンは若干ながらも首をかしげつつ、頷いてくれた。レンの髪の毛を上の方でまとめる。さらさらとした、絹のような手触りの髪の毛は、水のようにの手を抜け出していく。
 この髪の毛が、のせいで凄い……たとえば、変な癖がついたりしたら嫌だしなあ。そう思って言ったので、正直、すぐに答えを返してくれたのは助かる。

 ──それにしても、ただ結ぶだけじゃ楽しくないよなあ……。肩辺りまで髪があるし、三つ編みとかできそう。
 作ってみる。一応、四苦八苦して出来たといったら出来たのだけれど、手を離すとすぐにそれは解けてしまう。うーん、なんという髪の毛。の髪の毛と交換したいくらいだ。
 レンが、なかなか髪の毛を結ばないに疑問を抱いたのか、小さく「マスター」と語尾を上げた。
 ああ、結ばなきゃね。「ごめんごめん」と苦笑いを浮かべる。彼はわずかに小さく息を吐くと、「いえ」と言い、「マスターは」と続けた。


「何をしていたんですか?」
「んー、遊んでたんだよ」
「遊んで……」
「そ。だめだったかな。いや、レンの髪の毛って綺麗なんだよねー。良いね、羨ましい」


 頬を緩ませてそう言うと、彼は一瞬だけ、僅かに体を震わせ、「おれは」と、ぽつりぽつりと水滴が落ちるように、言葉を発した。


「マスターの髪の毛が、羨ましい、です」
の? 何でー」


 からからと笑う。どこらへんが羨ましいというのだろう。の髪は、一般的な日本人が持つそれと同じようなものだと言うのに。
 レンは小さく息を詰まらせると、「綺麗な」と続けた。


「とても、綺麗な──色だと、思います」
「色?」
「マスターにとても似合っていて、綺麗で……、……」


 レンが口を閉ざす。似合っていて、綺麗で、かあ。そんなこと、あまり言われない。思わずニヤニヤしてしまう。隣に座るリンが「わたしも」と続け、の髪の毛を手でそっと触った。


「マスターの髪の毛、綺麗で、羨ましいです! すっごくすっごく、良いと思います」
「そっか。ありがとう。もリンの髪の毛、すごく好きだなあ。明るいところとか、リンによく似合ってるよ」
「そうですか? ……えへへ、ありがとうございますっ」


 褒めると、彼女は恥ずかしかったようで近くにあった座布団を取り、顔にあてた。えへ、えへへ、と言う笑い声がくぐもって聞こえてくる。
 レンの頭部の上あたりに持って行き、髪留めで結ぶ。んー、これで良いのだろうか。リン、と名前を呼ぶ。彼女は顔に押し当てていた座布団を放るように床に置き、「なんですか」と鈴の鳴るような声を出し、を見た。


「これで良いかな」
「あ、──はい! 良いと思います!」


 リンがするよりは、きっと不格好なものになっているだろう。それでもリンは嬉しそうに満面に笑みを浮かべ、「すごいです、マスター」と続けた。すごい、というか。こんな手放しで褒められてばかり居ると、なんていうか……反応に困る。
 レンの肩を叩き、出来たよ、と呟く。彼は確認するかのように頭に手を伸ばし、まとめた髪を触る。そうして、の方へ振り向き、「ありがとうございます、マスター」と笑みを零した。


「……その、ええと……」


 言葉を続け、彼は何かを探すように視線をうろうろとさせる。髪を触っていた手を胸にやり、逡巡するかのように周りを見渡す。


「ええと、……その」


 言いたい言葉が、またもや見つからないのだろう。彼は小さく呻くと、「……なんでもありません、ありがとうございました」と続けた。そのあと、と視線を合わせる。


「……また、やってくれますか、マスター」
「え。良いの?」


 レンが頭を頷かせる。おお、なんていうか、嬉しい。
 思わず笑みを浮かべながら「わかった」と言うと、レンはそっと微笑み、「ありがとうございます」と言った。

 リンが「ねえねえマスター」との服の裾を引っ張る。なにー、と返事をすると、彼女は人好きするような笑みを浮かべて、「──わたしの髪も、梳いてください」とレンをぐっと押しのけ、の前に座った。レンが驚いたようにリンに視線を向ける。


「リン……」
「なによっ。レンばっかり、ずるい! わたしだって早くやってほしいの!」


 困惑したような、そんな声でレンがリンを呼ぶ。リンはその声に僅かに口を尖らせた。レンがしぶしぶと言った様子での前から身を引く。
 その様子を見て、リンは小さく笑みを浮かべると、「ありがと」と呟いて、の前に座った。


「マスター、お願いしてもいいですか」
「もちろん、良いよ」


 そういうと、リンははにかむように微笑んだ。そうして、の前に背を向けて座る。
 彼女の髪もレン同様、柔らかだった。美しい色は電灯の光でさえも反射してきらきらと光って、幻想的だった。

 くしで梳いても突っかかる場所がない。良いなあ、本当に……。
 そんなことを思いつつ、ちらりとリンの頭から視線を外し、レンに視線を向けた。二人して、の目の前で仲良く座っている姿は、なんだか見ていて微笑ましいものがある。
 レンは、テレビに視線を向けながら──手を、頭にやっていた。まとめた髪に手をやって、愛おしそうにその周辺をさする。
 髪の隙間からのぞいた頬が、ほんの少し赤かったのは、気のせいなのかもしれない。


続く

子供の情景
2008/03/26
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